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【スタジオネットワークエンジニア】1秒のその先へ。にじさんじの配信を支えるスタジオネットワークエンジニアの現場【従業員インタビュー】
生配信の活動をメインとするにじさんじは、今やYouTubeという配信プラットフォームにとどまらない。先日大阪城ホールにて開催された「ChroNoiR One-Man Live」や「ROF-MAO 1st LIVE - New street, New world」をはじめ、「にじさんじフェス2023」「YouTube Fanfest 2023」「AGF KOREA 2023」など国内外のリアルイベントや、テレビ番組・CM、ラジオ番組への出演など、リアルとバーチャルの垣根を感じさせない活動を見せている。
ライバーがあらゆる場所で活動を実現できている裏には、ライバーの映像や音声を現地に届ける「スタジオネットワークエンジニア」の活躍が不可欠だ。
そこで今回は、にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社(以下:ANYCOLOR)で配信スタジオに関わる3名から、それぞれの立場を通じてインタビューを実施。「1秒のその先を目指したい」と話す3名は、どういった仕事をしているのだろうか。
【取材を受けた人】
山川:スタジオ部 テクニカルディレクター
テレビ報道技術、大手配信会社を経てANYCOLOR(当時いちから)へ2019年に入社。
イベントや技術対応としては、第2回マリオカートにじさんじ杯、にじさんじ甲子園、ヤシロ&ササキのレバガチャダイパン等タイトルの立ち上げなどを担当。
直近の業務として、国内外イベントの技術対応を行なっている。
水越:スタジオ部 部長 テクニカルマネージャー
都内ライブハウスにてステージアシスタント、照明オペレーター、PA業務などを経て芸能系の制作会社へ就職。その後は動画編集、番組制作、カメラマン、スイッチャー、配信業務、タレントマネジメントなどを経験し、ANYCOLORへ2022年に入社。
現在は配信音声チームの統括を行いつつ、スタジオ部全体のチームマネジメント業務を行っている。
山口:技術部 副部長 ネットワークエンジニア
ストリーミングサービス基盤を運営する企業にてネットワーク・インフラエンジニアとして従事。公営競技・国際的なスポーツ案件等にてシステム構築やライブ現場でのネットワーク配信オペレーション等を行う。
2019年にANYCOLOR(当時いちから)に入社。
WEBサイトや社内システムのインフラ、情報システムの責任者に加えスタジオ・イベントネットワークの管理や映像伝送業務を担う。
トーク・バラエティ・音楽…様々なジャンルのエンタメに挑戦するANYCOLORだからこそ強い興味を持った
ーー皆さんはANYCOLORに転職してきていますが、ANYCOLORのどんな点に魅力を感じて入社したのでしょうか?
山川:
私は2019年に入社をしています。VTuberが話題になり始めた頃だったということもあり、ANYCOLORに応募するまではVTuberのことを全く知りませんでした。
いざ転職先を探している中で、妻から「こういう(ANYCOLOR)会社もあるらしいよ」と教えてもらったのが、VTuber、ひいてはANYCOLORを知ったきっかけです。
面接前にVTuberのことをあらかた調べ、ライバーとしてはJK組の3名しか知らない状態でしたが、「これから伸びそうだし、何より仕事をしていて面白そう」と感じて面接・入社に至りました。
山口:
私も山川さんと同年に入社しました。前職は10年ほど勤めていて、そろそろ次の会社に転職したいと思っていたなか、転職サイトで見かけたのがANYCOLORの求人でした。
今までのキャリアやこれからのビジョンを考え、ネットの動画配信事業をメインに行っている会社に転職したいと思っていましたので、ANYCOLORはまさに自分にとってぴったりな会社だなと考えて応募するに至りました。
正直、当時はVTuberやにじさんじのライバーのことはあまり分かってはいませんでしたので、面接前に少し調べた程度です。
水越:
私がANYCOLORに入社したのは2022年なので、この中では最も社歴が浅いです。
前職で配信や動画制作などの業務に7年ほど従事しており、将来のキャリアを見据えて転職活動をしていく中で、転職エージェントと相談しながら結果的にVTuber、なかでもにじさんじを運営するANYCOLORに入社を決めました。
前職のさらに前でいうと、ライブハウスで音響や照明などの仕事をしていたので、音楽やバラエティ、ゲーム、トークにも力を入れているANYCOLORであれば、私の経験を全て活かし切れるのではないかと思ったのが最終的な判断ポイントです。
ーー各々ANYCOLORに強い魅力を感じて転職されたとのことですが、正直他の会社と迷われましたか?
山口:
そうですね、ANYCOLOR以外でも動画系の会社からお誘いはもらっていて、数社内定もいただいていました。ただ、他に内定をもらっていた企業は、数年後も会社が残っているという意味でいつでも転職できるだろうと考えていました。
一方、ANYCOLOR、ひいてはVTuber業界が2019年当時成長期で、ある意味スリリングな環境だと当時考えており、この業界での経験を積んでおきたいと思ってANYCOLORへの入社を決めました。
山川:
私も山口さんに近いのですが、とにかく面白い業界でキャリアを積みたいというのが一番の転職の軸でした。
テレビ関係の知人に声をかけてもらっていたものの、報道系の番組だったということもあり、エンタメに携わりたいと思っていた自分は、ANYCOLORに迷わず就職を決めました。
水越:
広告代理店や、別の映像配信系の会社からも内定をもらっていましたが、やはりVTuberという今まで経験したことのないジャンルの経験を積みたかったのが大きいです。
正直、同業他社からの内定もあったものの、にじさんじのライバーが配信でやっていることのジャンルが幅広いことを知っていましたので、ANYCOLORが最も経験を積めそうだと判断しました。
現地で配信を支える役割だからこそ、観客の拍手の音を間近で感じられる
ーースタジオネットワークエンジニアとは、どういった業務を担う仕事なのでしょうか?
山口:
にじさんじの主戦場である生配信は、どうあってもネットワークを使うことになりますので、その配信業務に対するエンジニアリングをするというのが役割です。
特に分かりやすい例で言えば、社内のスタジオで収録される映像や音声を、そのままリアルタイムにイベント会場にデリバリーしているのが我々スタジオネットワークエンジニアです。
映像や音声のデリバリーに対し、専用の機械やソフトウェアの知識を活かして、日々行われる配信作業のサポートをしています。
我々が仕事を担うのは大きく2種類で、1つ目が先ほどお伝えした、オフラインで実施するイベント会場に対する映像と音声のデリバリーです。もう1つが、通常業務としてYouTubeでの生配信で2つのスタジオ同士を繋げる仕事です。
山口:
イメージしやすいイベントで言えば、「AGF KOREA」です。日本にいるライバーの映像を韓国現地のイベント会場にデリバリーし、リモートによる3Dライブでも、観客と出演ライバーのかけあいを、遠隔で実施できるようにすることも我々の役割と言えます。
プレスリリース【VTuberに特化したリモートライブシステムを株式会社stuと共同開発。AGF KOREAにて、韓国での3Dライブ公演をリモートで実現。】
ーーイベントによって詳細は変わると思いますが、仕事の1日の流れや詳しい業務内容を教えてください
山口:
私は大規模なイベントにおけるエンジニアリングを主に担当していますが、「AGF KOREA」イベント当日の大まかな流れをお話しします。
イベントで使用する機材やシステムについては当日までに構築が済んでいますので、まずイベント当日になったら朝一番で機材のチェックを行います。その後、リハーサルまでにイベント現地とANYCOLORスタジオ間のネットワークの疎通確認と遅延のチェックを実施します。
イベントであっても通常の公衆インターネット回線を使う場合は、通信品質を一定に保つことがどうしても難しく、画質・音質と映像遅延を上手く計算しながら本番までにセッティングを進めていきます。
また、イベントが始まったら、事前に確認しておいた通信の数値を維持し続けられているか、動画の乱れやネット回線の状況を目視やデータ数値で確認し続けます。万が一トラブルが起きた場合は、そのリカバリ措置を早急に実施します。
イベント当日以外で言うと、システムや機材の選定、ネットワークエンジニアリングについての情報収集、R&Dなど技術研鑽をすることも業務になってきます。
水越:
私と山川さんは日々、にじさんじのYouTube生配信に加えて、イベント当日の現場業務を行っています。
イベント当日にはライバーよりも先に会場入りし、現場の仕込みを進めていきます。回線の仕込みが完了し、現場で映像、音声が出せるようになったら、裏に控えている山口さんにバトンタッチして確認を続けてもらいます。
ライバーが会場に到着したら、ライバーのセットアップの準備をしつつ、イベント制作担当との打ち合わせを並行して実施します。現地とのネットワークの疎通と打ち合わせが完了し、ライバーの準備も終わったらリハーサル〜本番といった流れです。
山川:
大枠は水越さんと同じです。ただ、私はより現場に近い役割のため、当日どのような機材を使って、どうやって映像を会場に渡すかを外部の担当者と打ち合わせをすることが多いです。
また、本番で映像や音声が完全に止まってしまうといったことがないように、機材の追加やバックアップの構築をすることも現地で行っています。
ーー半年単位で言うと、どういった業務になるのでしょうか?
山川:
先ほども話に出た「AGF KOREA」で言えば、イベントの約半年前くらいからどういった形で進行するか、韓国の会場側へのデリバリーの仕方はどうするか、現地のネット環境や品質はどうかといった点を検討していきます。
また、現地会場の担当者と打ち合わせを重ね、使用する技術の取捨選択を行い、イベント当日3ヶ月前には配信環境の内容を固めています。基本的に現地での実地調査は行わず、ヒアリング内容だけでほぼ全ての仕様を確定しています。
事前の設計や構築が完了したあとは、当日のトラブルに備えたシステム組みを考えていきます。
山口:
イベント出演がLive2Dなのか3Dなのかによって、映像をそのまま送ればいいのか、それとももっと異なるデータで送るかが変わってきますので、それこそイベントごとで取り組む仕事が大きく変わります。
技術面だけでなく、イベント当日にオペレーターとして誰がイベント現地に行き、スタジオでは誰を担当させるのかなど、人員配置の検討も並行して行っています。
山川:
常にイベントに追われてるよね笑。
水越:
ありがたいことに、にじさんじのライバーが出演するイベントは年々増えてきています。
それに伴って我々の担当する仕事も増えていくため、協力してくださる方がもっといればいいなと考えています。
山口:
1人増えるだけでも大分仕事の進め方が変わってくると思います。この記事をご覧の方、ぜひご応募待ってます!
ーーイベントという刹那的な時間を支えている中で、仕事中特に注意しているのはどういった点になりますか?
山口:
デッドラインを決めることです。ネットワークにおいて、一定の基準値を超えたらイベントを中断してメンテナンスをしなければならなくなります。そうした結果に至らないようにするためにも、事前の課題抽出やリカバリ案の設計など、デッドラインを超えないことを特に注意しています。
山川:
デッドラインにそもそも至らないようにすることも我々の仕事です。
映像品質や音質について、どこまで許容できてどこからはNGなのかといった、線引きをチームで持っておくことは非常に重要だと思います。
それ以外の部分でいうと、できるだけネットワークの限界に挑戦し続けることを意識しています。ネットワークのやり取りをするとなれば、どれだけあがいても1秒程度のラグが発生します。
ただ、我々ANYCOLORは生で出演し、そのライブ感を大切にしたいと考えている会社ですので、極論を言えばラグがない状態が最も好ましいのだと思います。
映像や音声の品質と回線の安定性はトレードオフの関係にあるので、そこをどれだけ攻めて、ラグを縮めていけるかは常に考えています。
山口:
山川さんはラグの短縮を攻めたい派ですが、私はできるだけ品質が安定する方向を模索したいと考える派なんです。
そのため、山川さんと水越さんと議論をしながら、どれくらいの塩梅でデリバリーするかを決めています。
水越:
実は、イベントごとにネットワークのラグを無くす”攻め”と、安定性を重視する”守り”の塩梅は毎回変えています。
そのためにも、日々ネットワークや映像デリバリーに関する技術習得は欠かしていませんし、チーム内で思ったことをしっかり話し合える関係性を大切にしています。
山口:
「リハーサルまでネットワークに問題がなかったのに、本番が始まるといきなり回線速度が乱高下する」みたいなことも少なくありません。
コスト度外視であれば、一現場ごとに専用回線を引きたいのですが全現場で行うのは現実的ではないので、上手く調整するといった臨機応変さが大切です。
ーーこの仕事でやりがいを感じる瞬間はどういった点になりますか?
山川:
やりがいしかないです。
山口:
それはそう笑。
山川:
ANYCOLORのビジョンである、「魔法のような、新体験を。」を毎回の業務で体現している気がします。「本当にこれっていけるんだっけ?」から「できた」という経験を毎回のイベントで実感しています。
イベントが無事に終わるたびにホッとしますし、心のそこから「やったー!」という感情が湧き出ます。加えて、イベントに参加したお客様の喜ぶ顔も、イベントに出演したライバーのやりきった姿も見れますので、やりがいばかり感じています。
山口:
現状、私しか見れない仕事が多いので、やはり達成感は大きいです。
責任も裁量も多く持たせてもらっていますので、そこに対するやりがいも感じています。
水越:
私はライブハウスで働いていた経験もあり、拍手の音そのものが好きなんです。
一度その拍手の音の束を聞いた時から、もう一度その音を聞くために頑張りたいと心から感じるようになりました。
イベント会場のステージが暗転して、「バーッ」とも「ザーッ」とも聞こえる、まるで滝のような拍手の音がして曲が始まる。その瞬間がたまらなく好きです。
山川:
それで言うと、私も初めて会場で聞いたお客様の歓声が今も脳裏に焼きついています。「にじさんじ Music Festival~Powered by DMM music~」の現場で聞いた歓声や拍手の音。これは多分、今までのキャリアで感じたことのないような新体験だったと思います。
最近はライブやイベントでの声出しも解禁されてきていますので、また聞けるようになったのが嬉しいです。
山口:
私は逆で、イベントの際は配信部屋など現場から離れた個室で業務することが多いため、イベントが終わったあとに数名のスタッフと「お疲れさま」と言い合う瞬間が好きです笑。
イベントの盛り上がりの裏で、「その盛り上がりを裏で作ったの、実は自分なんです」と自分で自分を褒めてあげる瞬間もたまらないです。
山川:
それも分かる…!
山口:
全ての機材の電源を落として、一瞬静寂がくる瞬間もたまりません。
山川・水越:
めちゃくちゃ分かります笑。
ーー他の部署との関わりもあるかと思いますが、どういった部署とどのような協業をしていますか?
山川:
イベントで言うとライブエンターテインメント事業部とやり取りをします。自社スタジオ内であれば、営業運用部やYouTube戦略部がメインですが、おそらくどの部署とも常に協業していると思います。
水越:
そうですね。にじさんじはIPでもありますので、配信の告知などでグッズ紹介をするとなれば映像配信業務に我々も絡んでくるため、IPマーケティング部とも綿密にやり取りします。
タレントマネージャーも、ライバーともやり取りしますし…。逆に関わりのない部署ってありますか?
山口:
社長室くらいですかね。
…と思ったのですが、今まさにインタビューのやり取りをしていますので、社長室にある広報担当ともやり取りをしていました笑。
水越:
協業の仕方で言えば、イベントの企画側の理想と、実際に現場で技術的にできることの線引きをしっかり持っておくための議論を都度しています。
理想と現実の間で、それぞれの部署が意見を出してどこに着地させるかを検討するのは正直難しい一面もありますが、コミュニケーションが難しいと感じることはほぼありません。
山川:
企画側もライバー側も面白いアイデアをたくさん持ってきてくれるのですが、現代のネットワーク技術が追いついていないなどはありますね。
水越:
無茶を言われることはありますが、そのアイデアを実現したいという意図は汲み取ることができます。これは社内で全て内製しているからこそのメリットだと思っています。
ほとんどの要望は一旦持ち帰り、どうにかして実現できないか考えた上で結論を出すようにしています。もし外部に委託していたら、「できない」と一蹴されて終わりかもしれません。
せめぎ合いの中で、魔法のような、新体験を実現していきたい
ーー思い出に残っているプロジェクトがあれば教えてください
山川:
やっぱりにじさんじフェスです、毎回自分の中の記録が更新されていっています。
「あれ?フェスってついこの間じゃなかったっけ?」となるくらいに思い出に刻まれています。
山口:
私はクロス新宿ビジョンで行った、「Nornis」のリリース記念生ライブです。
Nornis - 「Transparent Blue」リリース記念ライブ at クロス新宿ビジョン(ライブ歌唱映像)
https://www.youtube.com/watch?v=wjZ-HfxtfB4
現場のネットワーク回線が想定以上に厳しく、今思うとあそこで生配信をするというのは中々に無謀なチャレンジだったなと思っています笑。
本番ではなんとか事故無く完遂できたのですが、実はライバーの背景映像はうまく工夫をしてその場の映像と合成をしているんです。
水越:
現場でスイッチャーをしていましたが、本当に上手く乗り越えられるのかヒヤヒヤしていましたよ笑。
山川:
現場のモニターもビルの外壁を取り囲むような変わった形なので、同じ環境で事前の検証をすることができませんでした…
山口:
どの会社もあそこで生配信をやらない理由が分かりました笑。
ーー他にも思い出に残っているプロジェクトはありますか?
水越:
直近で言えば、「YouTube Fanfest Japan 2023」です。
ステージが2つある会場で、シンプルにイベント当日のオペレーションが2倍になるという大変さがありました。
自社スタジオは1つで、イベント会場のステージは2つになりますので、現地のスタッフから映像や音声のトラブルについての連絡が入っても、どちらのステージから来ている報告なのかが分からず焦りました笑。
当日の配信は20分程度でしたが大変だったという意味で思い出に残っています。
山口:
20分の配信のためにすごい稼働していたよね笑。
水越:
ANYCOLORに転職してきて、「まだあのイベントから3ヶ月しか経ってないの!?」と感じることが多いです。
密度の濃い仕事をしているからか、時間の感じ方がちょっと変になっているかもしれません。まず間違いなく仕事で飽きることはないと思います。
山口:
イベントが変わればやり方が全く変わりますし、同じ会場だったとしてもイベントによって検討するポイントが変わりますので、臨機応変さも求められますね。
そういった意味では、毎回仕事が変わるので毎回思い出に残るとも言えるかもしれません。
水越:
イベント制作サイドも毎回新しい企画を持ってきてくれますので、そこに応えていくのが我々の重要な役割だと思います。
山川:
普通のエンジニアと違う点はまさにそこだと思います。
今までは80点を出し続けていくのが普通のエンジニア像だと考えていたのですが、ANYCOLORでは仮に100点を出しても「その100点って、過去の100点でしょ」という感覚を感じます。
あくまでも私個人の考えですが、無理難題を言われるのは知識も技術も高められますので、エンジニアとしてはありがたいです。
ーーエンジニアとしての感覚の話も出てきましたので、これから先ANYCOLORでどのようなエンジニアになりたいかもお伺いさせてください
山川:
先ほどの話に繋がりますが、他部署から何を言われても応えられるエンジニアになりたいと思っています。
イベント制作だけでなく、ライバーからも寄せられるたくさんの「やりたい」を技術面からサポートしていくことで、ファンの方に新しい体験を提供していきたいです。
山口:
「ネットワークのことであれば、山口さんに任せておけばいい」という存在になっていきたいですし、そう思われる人材をもっと増やしていくことに注力したいです。
水越:
新卒も含め、社内にはエンジニアがたくさんいます。目下の目標で言えば、社内のスタジオエンジニアが誰でもある程度ネットワークの対応ができるように能力を平均化していけないか考えています。
現在ではネットワーク周りの相談が一部の人に集中しがちな傾向にありますので、全員ができるようになれば、にじさんじが活躍できるイベントの場をもっともっと増やしていけると思います。
中長期的な観点で言えば、新卒・中途問わず新しく入ってくるメンバーを技術者として育てていきたいと思っていますし、学び合えるような環境作りの支援も行っていきたいです。
山口:
我々と同じくらい業務が回せるように成長させてあげるのも、ここにいる自分たちの大切なミッションだと思います。
ーースタジオネットワークエンジニアとして、今後どういった課題に取り組みたいですか?
山口:
開発目線でいうと、回線の安定性やリカバリ手法、バックアップ手法を現場のオペレーターに上手く落とし込んでいくといった課題に取り組みたいです。
オペレーターレベルで「このトラブルが起きたらこうやって対応してください」まで落とせるようにしていきたいと思っています。
山川:
先ほども1秒のタイムラグの話をしましたが、回線の安定性を担保した上で、様々な理由から生じる遅延そのものを狭めていけるようになりたいです。
生配信において、1秒のラグは長いと思っています。最終的にはリアルタイムの配信ができる世界を作っていきたいですね。
水越:
山川さんに通じますが、配信におけるライバーと観客とのコミュニケーション周りを解決していきたいです。
遅延を長くすればするほど音質と映像品質は安定しますが、リアルタイム性がなくなっていってしまいます。安定と速度のせめぎ合いの中で、どうやってより良いものを作っていくかをこれからも向き合っていきたいです。
職人気質と好奇心を発揮できれば、スタジオネットワークエンジニアとして活躍できる
ーー働き方や働く環境について教えてください
山口:
現場仕事になりますので、出社や出張は9割程度あるのが正直なところです。技術に関する研究開発の時間が取れるのであれば、それ以外でリモート勤務をすることも可能です。
また、イベントの当日はリハーサルや機材準備の関係で朝が早いです。朝の7時に現場入りといったことも珍しくありません。
水越:
イベントは土日祝日に開催されることが多いため、土日祝日の出勤もあります。
ただ、その分平日で代休を取るような運用になっていますので、ずっと働き続けるということはありません。
山口:
そうですね。「土日は絶対に休みたいです!」という人にはどうしても厳しいと感じるかもしれません。
また、ゴールデンウィークやお盆などの長期休暇にもイベントの開催が多くありますので、あらかじめ認識いただいた方がいいかと思います。
ーースタジオネットワークエンジニアとして働くには、どのようなスキルが求められますか?
山口:
ネットワーク構築だけでなく、映像や音声のデリバリーも行う仕事のため、前提知識がやや特殊です。
ネットワークの知識経験はあるものの映像系知識が足りない、その逆も然りですが、どちらかの知識は最低限求めたいと思っています。不足している方の知識については、好奇心を持って習得していただければと思います。
なお、入社後は映像系もネットワーク系もどちらも勉強して手を動かしていくことが大切になってきます。
山川:
ネットワークエンジニア経験者が映像エンジニアにもなることは可能だと思いますが、その逆はいけますかね?
山口:
本人のやる気次第だと思います。
前職で技術研修もやっていたので、新しく入社される方には必要に応じてしっかりと研修を実施するつもりです。
水越:
専門学校卒であれば、どのコースが最もこの仕事に適しているんですかね?
山口:
エンコーダーを介してネットに何かを流してみるということを突き詰める経験は必須だと思います。あとは、どの分野にこだわるかによって変わってくると考えます。
ちなみに私は学校で電子回路を専攻していました。やる気さえあればなんとかなると思いますよ。
ーーこのポジションで働くにはどのような人が向いていますか?
山川:
真面目で好奇心旺盛な人ですね。
水越:
たしかに真面目であることは大切ですね。
山川:
あとは、何にでも興味を持てる人や優しい人とかも挙げられます。
ネットワーク職でありながら、配信を生業とするスタジオ職でもある関係で、社内外問わず関係者との打ち合わせが多いです。
「技術的にできません」などと厳しすぎる性格だと他人とのコミュニケーションが取れませんので、そういった意味で優しい性格であることが重要です。
山口:
それ以外で言うと、職人気質がある人にも向いていると思います。
ライバーによって対応に差を出さないであるとか、日進月歩で進化していくネットワーク知識をアップデートし続けるとか、真面目に仕事に向き合う姿勢はとにかく重要です。
ーー最後に、このポジションへの応募を迷っている人に一言メッセージをお願いします
山川:
特殊な職種ですので、自信が少しでもある方は応募してみて欲しいです!
我々も手探りで進めていますので、ぜひ色々なバックボーンを持った方とお話してみたいです。
水越:
朝早いとか、海外出張とかもある仕事のため、健康な方、頑丈な方のご応募待ってます!
山口:
やることが多岐にわたり大変ですが非常にやりがいのある仕事です。一緒に働く人が増えることを楽しみにしています!
ーーANYCOLORのにじさんじが提供する、「魔法のような、新体験を。」を裏で支えているネットワークエンジニアの働きぶりについて、実体験を元に3名のエンジニアに語ってもらった。
インタビューの中でもあったが、にじさんじのライバーが登場するイベントは年々増加していることもあり、それを支えるネットワークエンジニアは今、積極的な採用活動を実施している。
ネットワーク構築や配信技術の経験がある方は、ぜひこの機会に応募をしてみて欲しい。コンマ数秒のラグを目指すような、やりがいのある日々を送れるはずだ。
※情報は取材当時のものです
※取材・執筆:中嶋 駿弥